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「亜紀」
と。すると彼女は甘えるように、
「もう1回」
と言ってくる。
「亜紀……」
名前を呼ぶだけでも愛しい。すぐに抱き締めたい、側にいって何度でも呼んでやりたい。
「先生ありがとう」
「亜紀は呼んでくれないのか?」
「えっ!?」
「俺の事、シンって」
「なんか……恥ずかしい」
照れる君の顔が想像できる。シンは目を閉じていた、近くにいるように感じたかったからだ。
「呼んでほしいな、先生じゃなくて『シン』って」
「……」
黙ってしまう亜紀、早く呼んで欲しくて。
「ん?」
そう急かしてみると、
「シン……」
体に電流が走った気がした。きっと受話器から電流が流れたんだろう。なんておかしな事を考える。
本当は分かっている、嬉しくて心がふるえたんだと。
「嬉しい」
温かい気持ちが溢れて、少し気持ちに余裕が出来た。
「あっ! そう言えば、学校見学どうだった?」
本当は学校見学の事なんて聞きたくなかった。嫌でも相沢の事に触れるような気がしたからだ。
親友なのに……嫉妬というものは実に恐ろしいものだ。
「楽しかったですよ」
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