*…朧…* #2

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「亜紀」  と。すると彼女は甘えるように、 「もう1回」  と言ってくる。 「亜紀……」  名前を呼ぶだけでも愛しい。すぐに抱き締めたい、側にいって何度でも呼んでやりたい。 「先生ありがとう」 「亜紀は呼んでくれないのか?」 「えっ!?」 「俺の事、シンって」 「なんか……恥ずかしい」  照れる君の顔が想像できる。シンは目を閉じていた、近くにいるように感じたかったからだ。 「呼んでほしいな、先生じゃなくて『シン』って」 「……」  黙ってしまう亜紀、早く呼んで欲しくて。 「ん?」  そう急かしてみると、 「シン……」  体に電流が走った気がした。きっと受話器から電流が流れたんだろう。なんておかしな事を考える。  本当は分かっている、嬉しくて心がふるえたんだと。 「嬉しい」  温かい気持ちが溢れて、少し気持ちに余裕が出来た。 「あっ! そう言えば、学校見学どうだった?」  本当は学校見学の事なんて聞きたくなかった。嫌でも相沢の事に触れるような気がしたからだ。  親友なのに……嫉妬というものは実に恐ろしいものだ。 「楽しかったですよ」
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