*…朧…* #2

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 だが桜井の運転は荒くなく、乗り心地が良くて。ふとあの日の電話の事を思い出した。  亜紀の家を出て、もしかしたら父親に会うかもしれないと思ったが、会わずに結局は優のアパートまで帰ってきていた。  優と相沢は2人で飲んだらしくテーブルには空の缶がいくつもあり、ソファでそれぞれ寝ていた。  ベランダに出てタバコを吸う。明後日にはまた沖縄だと思うと、一気に寂しさが襲った。  携帯を取り出し亜紀に電話をかける。亜紀の声が聞きたい……。 「もしもし」  すぐに電話に出た亜紀は、きっと待っていたのだろう。 「取るの早いな」 「だってぇ……」  震えている声。 「泣いてるのか? 亜紀は泣き虫だな」 「泣き虫でいいもん……ぐすっ」  そんな彼女の寂しさをけすために、これからの事を話した。彼女のためと言いながら、自分のためでもあった。  毎日メールをする、電話をする、卒業したらいっぱいデートをして、映画を見に行ったり、海に行ったり遊園地に行ったりしよう。  そして、同棲もしてみたい。 「父さんが許してくれないよ」  なんて嬉しそうに言う君の声が愛しくて。 「許してくれなくても、何回でも頼みにいくさ」   と囁く。
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