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だが桜井の運転は荒くなく、乗り心地が良くて。ふとあの日の電話の事を思い出した。
亜紀の家を出て、もしかしたら父親に会うかもしれないと思ったが、会わずに結局は優のアパートまで帰ってきていた。
優と相沢は2人で飲んだらしくテーブルには空の缶がいくつもあり、ソファでそれぞれ寝ていた。
ベランダに出てタバコを吸う。明後日にはまた沖縄だと思うと、一気に寂しさが襲った。
携帯を取り出し亜紀に電話をかける。亜紀の声が聞きたい……。
「もしもし」
すぐに電話に出た亜紀は、きっと待っていたのだろう。
「取るの早いな」
「だってぇ……」
震えている声。
「泣いてるのか? 亜紀は泣き虫だな」
「泣き虫でいいもん……ぐすっ」
そんな彼女の寂しさをけすために、これからの事を話した。彼女のためと言いながら、自分のためでもあった。
毎日メールをする、電話をする、卒業したらいっぱいデートをして、映画を見に行ったり、海に行ったり遊園地に行ったりしよう。
そして、同棲もしてみたい。
「父さんが許してくれないよ」
なんて嬉しそうに言う君の声が愛しくて。
「許してくれなくても、何回でも頼みにいくさ」
と囁く。
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