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そして君の笑顔も俺だけに……。
結局、視察の話しは言わなかった。いきなり行って驚かせようと思ったからだ。
彼女の心が微妙に揺れている事なんて、この時は何も気付かずに、ただ毎日が普通に過ぎているんだと思った。
君と電話やメールをするたびに安心しきっていたのかもしれない。
ただの自己満足……君も満足していると思っていた自分は、まだ未熟だった。
彼女はまだ10代で若いという事を忘れていた訳じゃないが、もっと構ってやらなきゃいけないって事を忘れていた。
まだ弱い事、無垢な事。
まだ彼女自身の世界が狭いと言う事。
――あれから数日が経ち。
真奈美と桜井の家にきていた。真奈美とは一緒に視察に行くことが決まり、真奈美はとても楽しみにしている。
亜紀とのメル友の件で、アドレスを教えたが真奈美は父親と喧嘩中で携帯を止められていて、亜紀とはまだ連絡を取れてないらしい。
タイミングが良いと思ったのはシンだけだろう。これで亜紀にバレる事はないからだ。
視察に行く事を秘密にして欲しい言うのは危険すぎるし、いきなり行って脅かしてやれと提案しても、それを真奈美が受け入れなければバレてしまう。 あまり行動を起こして、真奈美が気付いたら……。やはり何もしないほうが一番だ。
火のないところに煙りはたたない。
自分の中では全てが順調にいっていた。
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