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亜紀の声は、最初に比べとても明るくなっていた。
「私は、先生ともう一回あの夜景を見にいきたいなぁ~」
嬉しそうに話す顔が想像できるのは、ゾッコンだからだろうか。
「あと、遊園地いって観覧車乗りたい」
「良かった。元気になってるみたいで」
「へへっ」
あの時確かに心が温かかった。
「なんかいい事あった?」
桜井に声をかけられて現実に引き戻された。すっかり自分の世界に入っていた事を、周りの景色が変わっている事で気が付いた。
「いや、なんで?」
「なんか幸せそうな顔してたから」
「そうか?」
「あぁ、さては彼女とモトサヤか?」
「そんなとこ」
でも、距離と時間というものは時に残酷である。
繋ぎとめたと思ったものさえも、少しずつゆるくしていく……。
会えない時間が想いを募らせ、大きな反動を生む事を、この時の2人は考えてもいなかった。
毎日のメールや電話じゃ物足りなくなってしまう……。
嬉しさや楽しさがあれば、逆に寂しさも倍返しだという事を。
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