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まさかあんなに亜紀が泣いてしまうとは思わなかった。あれは嬉しくて泣いたのだろうか……。
生徒と少し会話をしたあと、体育館に向かいながら携帯を取り出した。
早く亜紀に電話をしてやらないと……。体育館へ真直ぐに行かずに、裏へとまわる。
通話ボタンを押すと、すぐに呼び出し音がなった。そして、繋がった電話。
「亜紀?」
名前を呼ぶと、
「どうして……? なんでいるの?」
かすれた声、弱々しいその声を聞くとすぐに側に行って抱き締めてあげたくなる。
「亜紀たちが、前沖縄に視察に来ただろ? 今度は沖縄の生徒と先生が、視察にきたわけ。
亜紀を驚かそうと思って、黙ってたんだけど……」
「教えてよ……びっくりしたよ」
「ごめんな。まさか泣くとは思わなくて」
「だって……」
小さなその声のあと、
「会いたかったから……」
とまた小さく続く。
「嬉しかったから」
また、嬉しい言葉を言ってくれる。
君よりもずっと俺の方が気持ちは大きいのに。嬉しすぎて、思わず左手で顔を覆いはにかんだ。
「そんなに会いたかったのか?」
「当たり前だよ……」
こうやって確かめる事で、幸せに浸る。
「今どこ?」
「トイレです」
そう少し会話をして亜紀の気持ちが落ち着いてから電話を切った。
(大丈夫かな……)
心配しつつも体育館へと戻る。頭の中は亜紀の事でいっぱいだ、また泣いていたらどうしようとか。
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