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さっきまで嫌々やっていた戸締まりも、こんなご褒美があるならこれからも是非引き受けたいとまで思ってしまう。
先にカーテンを全部閉めといて良かった。
やっと二人きりになれ、
「やっとだな……」
カーテンを少しめくり外を確認した、人気はないし、誰にも見られていない様子。
シンは部屋を移動しようと、化学室の入口に内鍵をかけ準備室へと向かった。中でつながっているため、誰にも見つかる事はない。
準備室というのは名ばかりで、今はそこに化学教師の寛ぎスペースが出来ている。テーブルやらイスやら、休憩室の様なものだ。
化学室の電気は全部消し、光りのある準備室へ。
「ちょうど、化学室閉めてたんだ……」
準備室の廊下に繋がるドアにも内鍵をかけていようと思ったが、万が一見つかった時に言い訳が苦しくなりそうで鍵はかけなかった。
『何故、鍵をかけて中に二人でいたんだ?』
なんて聞かれたら、言い逃れできそうな理由が見つからない。
「まぁ、適当に座って」
中央にあるテーブルの近くの椅子に亜紀は腰をかけた。
「亜紀……」
名前を呼びゆっくり近づく。
「父さんの約束破っちまったな」
そう言うと、亜紀と視線があった。
「寂しかったか?」
一瞬で歪む亜紀の顔、そして瞳から涙があふれでた。
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