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「う……ん」
泣きながら頷く亜紀の頭をシンは優しく撫でた。懐かしい感触、亜紀の匂い。
「ごめんな……」
そう静かな時間を、いきなり音が破る。
「あれ? 開かない」
という声が聞こえてきた。誰かが化学室を開けようとしたのだ、
(ヤバい……)
すぐに亜紀から手をはなしたが、
「準備室かな?」
という声が聞こえて、足音が近づいてくる。足音から一人ではない事が分かった。
シンは邪魔をされたくないと咄嗟に思い、静かに亜紀を立たせ真っ暗な化学室に引っ張り連れていく。
亜紀も泣いていたため、このまま見つかる訳にはいかない。
真っ暗な中、シンは化学室の大きな机の影に亜紀を引っ張り、隠れるように座った。実験用の机は水道や収納スペースなどもついているため、大きくて死角があった。
その後準備室のドアの開く音が聞こえて、
「あれ? 細川先生いないよ」
「化学室じゃない?」
とこちらに向かってくる足音、パチンとつく電気にもうダメかと思ったが。
「どこいったんだろ?」
とまたすぐ電気は消えその人たちは居なくなった。
(良かった……)
足音が遠のいていく。
「ふぅ……」
上手く隠れぬいたと息をつくシンは。
「大丈夫か?」
と亜紀の頭を撫でたあと、立ち上がると暗い化学室から準備室へ戻ろうとはせずに、亜紀をひょいっと抱き上げ机の上に座らせた。
「せんせぇ……」
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