*…朧…* #3

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「う……ん」  泣きながら頷く亜紀の頭をシンは優しく撫でた。懐かしい感触、亜紀の匂い。 「ごめんな……」  そう静かな時間を、いきなり音が破る。 「あれ? 開かない」  という声が聞こえてきた。誰かが化学室を開けようとしたのだ、 (ヤバい……)  すぐに亜紀から手をはなしたが、 「準備室かな?」  という声が聞こえて、足音が近づいてくる。足音から一人ではない事が分かった。  シンは邪魔をされたくないと咄嗟に思い、静かに亜紀を立たせ真っ暗な化学室に引っ張り連れていく。  亜紀も泣いていたため、このまま見つかる訳にはいかない。  真っ暗な中、シンは化学室の大きな机の影に亜紀を引っ張り、隠れるように座った。実験用の机は水道や収納スペースなどもついているため、大きくて死角があった。  その後準備室のドアの開く音が聞こえて、 「あれ? 細川先生いないよ」 「化学室じゃない?」  とこちらに向かってくる足音、パチンとつく電気にもうダメかと思ったが。 「どこいったんだろ?」  とまたすぐ電気は消えその人たちは居なくなった。 (良かった……)  足音が遠のいていく。 「ふぅ……」  上手く隠れぬいたと息をつくシンは。 「大丈夫か?」  と亜紀の頭を撫でたあと、立ち上がると暗い化学室から準備室へ戻ろうとはせずに、亜紀をひょいっと抱き上げ机の上に座らせた。 「せんせぇ……」
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