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「もう泣くな……」
暗闇の中、まだ泣いてる亜紀の涙を指で拭った。
「あいたかったぁ」
震える声で呟く亜紀、目が慣れてきてはっきりしていく視界。シンは亜紀を優しく抱き締めた。
暖かい温もり、小さな身体。力を込めると、折れてしまいそうだ。
亜紀の手が背中に回ったのが分かる、ギュッと抱き付く仕草、密着、愛しいと思った。
だがシンは中腰だったため、少しずつ腰に負担がかかる。昨日の相沢の引っ越しの手伝いが原因だろう、いつもならこれくらい平気だが、
「亜紀……座るか」
亜紀を抱き上げ机から降ろした。
「ちょっと腰にきた」
カッコ悪いと思ったが正直にいう。それで二人は、また床に座る事になった。 準備室には戻らずにそのまま。
「俺ももう歳だな、中腰はやっぱりきつい」
というと、
「ふふっ」
と笑った。
「笑うなよ」
「だってぇ」
亜紀が笑顔になったから、カッコ悪い事をいったが良しとする。
やっぱり笑顔の亜紀が好きだ。彼女には笑っていて欲しい。
それから、学校の話しをしたり、バイトの話しをしたりした。そして、
「そう言えば、バイト大丈夫か?」
亜紀がバイトなのを思い出した。すると、亜紀は眉間にシワを寄せ、
「んん~やだぁ~」
とバイトに行きたくないと言い出し、バイト仲間の琢磨にすぐ電話をしだして、バイトをかわってもらっていた。
琢磨は亜紀と同じ年で、シンの教え子でもある。
「そんなに、一緒にいたいのか?」
そう聞くと、
「だって、まだ10分も経ってないもん……」
そう俯いた。
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