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「……」
一気に地獄に突き落とされた気分だった。
優にトキメイタ……相沢に頼った。他の男の名前が出てきて、嫌な気持ちにならない男はこの世にいないだろう。
モヤモヤと濁っていく心に、彼女はナイフを刺したいのか、
「私……わたし……」
「もう何もいわなくていいから」
もう、何も聞きたくなかった。きっといい事ではないだろう、そんなのすぐに分かる。
何故、彼女は今それを言う必要があったのか、罪悪感を感じているのか、それとも自分の気持ちがわからなくなったのだろうか。
沈黙が流れて、重い空気が二人を包む。
シンは亜紀から視線をそらし、ぼうっと暗闇を見つめた。
どうしたら良い、何を言えばいい。彼女の気持ちが分からない、会いたかった、そう言った彼女の言葉は本物?
弟の優にトキメイタ……嫉妬、冷静でいられなくなる。
「なぁ亜紀……俺達、最初から無理だったのかもな」
冷たい言葉。泣きだす亜紀。
「もう、俺の事……忘れたら?」
君の気持ちが分からない。自分のものだと思っていた君の気持ちが……。
「やだ!!」
首を横にふる。
「やだよ……や……だ……」
うつむき泣く声が耳に虚しく響いた。
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