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優にあからさまに呆れた顔をされ、思わず苦笑いがでた。携帯を取り出し亜紀にメールを送る。
見てしまう事は仕方ない、こんなに話したくて、抱き締めたくて仕方ないんだから。世間の目なんて気にしなくていい立場だったら、迷わずに抱き締めていたのに……。
『なかなか、話せないな。ゆっくり、話す機会があればいいけど。亜紀は今日バイト?』
隣の優の冷たい視線が痛い。
『先生と話したいよ。今日バイトです』
返ってきたメールを見て、すぐに携帯をポケットにしまうと、
「仕事終わったら会えばいいでしょ。それまで我慢出来ないわけ?」
と優が聞いてきた。
「俺はいつでも我慢してるんだよ」
「そうは見えないな……」
「時にはそうじゃなくなる時もある」
「ふぅ~ん、そんなに好きなんだ?」
「まぁなぁ」
そして教室についた、優が授業を進めるのを観察しながら、たまに亜紀の事を考えていると、優は気持ちを読んでいるんだろう、冷たい視線を投げてくる。
笑顔を返すと、また呆れた顔をされた。
(弟のくせに生意気だな……)
そう思いながらも、なんだかシンは兄弟のやりとりが嬉しくてたまらなかった。
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