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体育館の裏、背を向け立っている女のコはこちらを振り返った。
「安藤……」
「先生」
近くまでかけよってくると、
「本当にごめんなさい。でもちゃんと伝えたくて」
そう呟いた。周りには誰もいない、頭の上に広がる木の葉の間から、漏れる光が地面で揺れている。
「朝はあんまりちゃんと伝えられなかったから……聞いて欲しくて」
シンは何も言わなかった。
「私、先生の事諦められないんです。亜紀の事を好きだと分かってても、どうしても……諦められなくて」
「先生が沖縄に行ってから、離れてからますます考えるようになって、本当に好きなんです」
真剣な瞳、すぐにでも視線を反らしたかったが、それを我慢した。
「安藤、気持ちは分かった。ありがとう。でも」
「分かっています。ダメなんですよね?」
言葉を言い終える前に、そう聞かれた。
「あぁ、気持ちに答える事は出来ない」
「……分かってます」
「俺には、亜紀がいる。こんな事をいったら安藤を傷つけるかもしれないけど、正直に言うよ」
残酷かもしれない、けれどもこれが一番良い方法だと思った。そして、きっと彼女もその事を分かっているはず。
「亜紀以外考えられないんだ……他の女の人には魅力を感じない」
本当に言葉というのは残酷だ。
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