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彼女は何がしたかったのか……気持ちを伝えてどうしたかったのか……。
希望が欲しかった? 少しでも期待していたのだろうか。
彼女は頭が良い、こうなる事はきっと分かっていたはずなのに、何故呼び出したりしたんだろう。
「亜紀は幸せですね……先生の気持ちは分かってました。でも、ぶち壊したくて」
微笑んだ彼女は、少し怖かった。
「手に入らないって分かってても、欲しいものってあるじゃないですか。
ちょっとでも、先生に私の事を考えて欲しいから」
「だからこうやって呼んだのか?」
「はい。分かってたんですけど、先生を苛めたくなっちゃって」
舌をペロッと出す彼女は、どんな気持ちなんだろうか。
「参ったな」
「もう言いたい事は言いました。じゃあ失礼します」
シンの横を通り過ぎる時、
「これからも、好きですから」
と呟いた彼女の横顔は、今にも泣きそうだった。
シンは振り返らず、声をかけず、彼女がいなくなるのを待った。
「はぁ……」
なんだか心が苦しくなる。自分のせいで傷ついていると思うと、やりきれなくなる。
でも、これが良い方法だった。早く亜紀に会って癒されたい。
そう思うことで、少し気持ちが安定する。
(亜紀……)
早く抱き締めたいのに。
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