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本人から言わない限り聞くのもどうかと思い、観察は続く。
大将が他の客の所にいくと黙る桜井に、なんて言っていいのかも分からずにただビールを飲んだ。
「はぁ……」
ため息、桜井がため息をつくのは珍しい。ここはやはり聞くべきなのか。
ビールを一気に飲み干した桜井は、おかわりを注文した。
「細川もいっぱいのめよ」
「おう」
すると珍しく真奈美が一階に降りてきた。シンと桜井に気づき、
「あっ来てたんですねぇ~」
と冷蔵庫を物色しながら、言ってくる。
「来ちゃ悪いか」
そう聞く桜井に、
「別に」
と冷たく返す。やはり喧嘩をしているのだろうか。
冷蔵庫からジュースを2本取り出した真奈美は「ごゆっくり」と言い残すと2階に上がってしまった。
「っち。あいつムカつく」
そう呟いた桜井は、またビールを一気に飲み干した。
「大丈夫かよ。飲み過ぎじゃないか?」
「大丈夫、これくらい」
だが、桜井は全然大丈夫ではなかった。30分後にはベロベロの状態で、カウンターにもたれウトウトしていた。
「じゃあまたな」
二階から声が聞こえてきたと思ったら、真奈美と仲の良い和輝だった。カウンターでウトウトしている桜井を見ると静かに後ろを通り、
「細川先生、さようなら」
と小声で呟き、帰っていった。まるで桜井を避けているかのように。原因はこれかっとシンはなんとなく勘づく。
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