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「え?家に来るの?」
蘭はコートを持ったまま、知優の横に来た。
知優は携帯をみたまま、ただ頷いた。
「何しに行くの?」
知優は蘭の問いに首を傾げる。
「挨拶」
知優の目は携帯の画面から動かない。
「だから何の挨拶?」
蘭は主語が抜けている知優にわざわざ問う。
心のどこかでは『結婚の挨拶』だと蘭も分かっているはずなのに。
知優は、携帯から目を上げ蘭を視線を向けた。
困った顔の蘭。
彼女は、知優が親に挨拶に行けない理由もわかっている。
だから、知優の挨拶を先延ばしにし、自分も電話だけの報告にしていた。
「オレはオレだから」
知優は当たり前の事を当たり前に言う。
蘭は知優に聞こえないくらいのため息をついた。
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