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泉さんの後について部屋に入ると、さっきのスーツ男がいた。
スーツ男は私を見ると、スゴい速さで私の横にくるなり腕を掴んだ。
「痛っ」
さっきより強い力で掴まれ思わず声をあげた。
「何入ってきてんだよ。お前」
怒鳴られた。
部屋にいた全員の目が私に注がれた。
横にいた泉さんがスーツ男の腕を押さえた。
「違いま……」
泉さんが何か言い終える前にスーツ男は床に倒れた。
私も一緒に倒れるかと思って倒れる準備をしたが、宙に浮いた状態だった。
後ろから抱き抱えられていた。
匂いからYOUさんだと分かった。
「やめた。泉、悪いけどキャンセルね」
それだけ言うと私の手を引き部屋を出た。
エレベーターを待つ間、YOUさんがぽつりと、
「ごめん。大丈夫だった?」
言いながら私の手をとった。
「うん。大丈夫」
それだけ言うと下を向いた。
自分の顔が赤くなるのを感じた。
いつもなら、すぐにからかってくるはずのYOUさんだけど、今は何もいわず、エレベーターの階数表示をみている。
なんか近寄りがたい雰囲気に変わった。
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