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「あの曲は発売しない」
YOUはタバコに手を伸ばした。
火をつける。
『ふぅ~』
煙が登る。
「なんで?イイ曲じゃん。」
YOUから出た煙が気になる。
仕方ない。と言う感じでYOUが口を開き始めた。
「元々、発表する曲じゃなかったんだよ。でも仕方なく一度キリ。って事で。だから発売しないし、もう演奏もしない。オレも歌わない。」
YOUの表情には、色々な感情がみえた。
「何で一度キリなの?」
聞きたくって、YOUが怒るかもしれないけど、私は続けた。
「人にあげた曲だから、もうオレの曲じゃない。」
YOUは真っ直ぐ私の目をみながら続けた。
「あの曲は美有にあげたでしょ。だから『Muse』は美有のものだから」
私のもの?
意味が分からない。
私を見てYOUが笑う。
「美有に贈るってあったでしょ。オレは美有にあげたんだよ。
だから発売はしないし、美有だけの曲なんだよ。あの曲が書けたのは美有がいたから。だから美有の曲なんだ。」
はにかみ笑顔に、私は飛び付いた。
YOUの耳に口をつけ、
「ありがとう」
そう呟くのが、やっとだった。
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