1年 ~美有~

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DMPの通常業務をこなしながら、東京公演の準備をする。 進路の事は良く考える。 今は私に出来る事を一生懸命するだけ。 東京公演は全部で4カ所。  会場は一万人のトコや五百人、色々ある。  3公演目の直前リハーサルの時に私の携帯が鳴った。  私はいつも客席の一番奥からステージをみる。 それはYOUの指示。 『どんなトコからでも楽しんでもらいたいから、客席、特に末端から見える事が大事だ。』 私がツアーに同行するようになってからは、末端チェックが私の仕事になった。 携帯の画面を見て固まる。 病院からの電話。  早く出なければいけないと思いながらも、指は通話ボタンを押せずにいる。 震える指でなんとか通話ボタンを押し携帯を耳に押し当てた。 「・・・・もしもし?」 『しのださんの携帯で宜しかったでしょうか?』 「はい。祖母に何か?」 『今から病院にこられますか?どのくら…………』 看護師さんの説明なんて全く耳に入らなかった。 ただ『何があった』から電話がきて、『早く病院に来るように』との事しか理解出来ない。 ステージ裏に戻りYOUを探す。  ステージ中央で音合わせをしている。  泉さんを見つけ、病院からの話をした。  普段であれば何があってもこんな行動をしない泉さんが、ステージ上でリハーサル真っ只中だというのに、YOUに駆け寄った。  『じゃするな!!』と言わんばかりのYOUだったけど、泉さんの話を聞き、私の元に駆けて来てくれた。
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