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☆
「ちょっと待って。」
漸く健太を寝かしつけて私も休めると思ったのに、何故か彼に引き止められた。
「何?」
今日は本当にくたびれ果てた。
人混みの中での買い物も、パーティの準備も後片付けも、結局は全部私の仕事なのだ。いけないとは思っても、ついついぞんざいな口調になる。
彼だって毎日仕事で疲れてるのに。それでも、苦手な買い物にも付き合ってくれたのに。
素直に彼に優しく出来ない自分自身に嫌気がさす。
ーーーそれは、不意打ちだった。
「クリスマスおめでとう。」
「え?」
「え、って。プレゼントだよ、僕からの。開けてみてよ。」
クリスマスらしい飾りなんて何もない、シンプルな茶色い紙袋から出てきたのは一枚のレコード。
ジャケットを見て一瞬で、あの頃の自分に戻る。
彼の事が好きで好きで大好きで、側に居られるだけで幸せだったあの頃。
ケンカをする度にどちらかがこのレコードをかけて、仲直りのキスをした。
貴方は、まだあの頃の気持ちを覚えているの?
その思いを大事に抱えていたのは、私だけじゃなかったのかな?
色々な想いが、涙になって溢れ出した。
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