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「どこで見つけたの?これ…」
彼女が涙で顔をくしゃくしゃにして尋ねる。
「あそこだよ、上通りのウッドペッカー。たまたま健太のトイレを借りに入ってさ…」
「あのお店、二人でよく通ったね。」
やっと彼女の顔に笑顔が浮かぶ。
ああ、やっぱり…いいな。
僕はその顔が見たかったんだ。
「でも、どうして?クリスマスプレゼントなんて久しぶり。」
「あー…」
彼女が責めている訳じゃないのはわかってたけど、気まずい僕は頭を掻いた。
「このレコードを眺めてる時に健太に言われたんだ。どうしていつもママにだけサンタさんが来ないの?って。」
そう、彼女が用意するプレゼントはいつも二つ。健太の分と僕の分、毎年枕元に置いてくれている。
「僕は君の優しさに慣れすぎて、甘えていたよ。本当にごめん。」
ふるふると首を振る彼女を僕はそっと包み込む。忘れていた彼女の匂い、そして体温。
毛羽立った心が、ゆっくりと凪いでゆく気がした。
「折角のクリスマスなんだから、たまには二人でゆっくり飲もう。」
僕は君と話がしたい。
そして、君の笑顔が見たいんだ。
本の少し間を空けて、君は僕の胸の中で俯いたまま、遠慮がちに尋ねてきた。
「じゃあ、テレビを…消してくれる?」
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