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☆
いつもとは違う優しい彼の言葉に、勇気を出して言ってみた。
「じゃあ、テレビを消してくれる?」
一瞬、キョトンとする彼。
そうだろう。彼はテレビフリークだから。
ちょうどこれから、彼の好きなスポーツニュースが始まる時間。
折角のいい雰囲気を私の我儘で台無しにしちゃったかしら?
「何だ、そんなこと?」
ぷちん!
彼は私を見つめて微笑むとテレビのスイッチをオフにした。
「これでいい?」
「ありがとう。」
いつも二人のケンカの種になっていたテレビが消えて、リビングが無音になる。
「レコードでもかけようか。」
もうずっと、インテリアの一つになってしまっていた古いレコードプレーヤーに彼はそっと針を落とす。
懐かしい、あのイントロが部屋中を満たしてゆく。
テーブルには私の好きな白ワイン。
照明を落として、彼と二人並んでソファーに腰かける。
今夜は何時まででもお喋りしよう。勤勉なサンタには『早く寝なさい』って怒られちゃうかもしれないけれど。
「またケンカをした時は、この曲をかけてよ。僕はなかなか言い出せないから。」
「…うん!」
ありがとうの気持ちを込めて、私からキスをした。
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