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僕に聞こえる程、態とらしく大きくため息をつく彼女。ゆっくりと閉まる寝室のドア。
「健太、寝た?」
「うん、何とかね。」
「そう、お疲れさま。」
健太がいつも布団に入る時間よりかなり遅い。
サンタクロースを信じる健太は、興奮してなかなか寝付けなかったんだろう。彼女もかなり疲れてる。
いつもなら、気に障ってスルーする彼女のそんなアピールにも、今夜は素直に労わりの言葉をかけてみる。
「え?う、うん。疲れたから、私も先に寝るね。おやすみ…」
いつもと違う僕の態度に、流石に驚いてるみたいだ。
「あ、ちょっと待って…」
「何?」
訝しげな彼女はきっと全く気付いてない。
僕はガサコソと音を立て、夕食の間、ソファーの背凭れとクッションの間に必死になって隠しておいた紙袋を取り出した。
「クリスマスおめでとう。」
「え?」
「え、って。プレゼントだよ、僕からの。開けてみてよ。」
言われるままに袋を開く彼女。
ハッと息を飲むのがわかった。
つい、と彼女の頬を涙が伝う。
今度は僕が困惑する番だ。
「そんな、泣くほどの事でも…」
「だって…」
彼女の手には、あのレコード。
「どこで見つけたの?これ。」
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