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手に入らないと、分かっているから余計に欲しくなる。
そう言う不毛な性が、人間にはあると思う。
「え、じゃあ4月からこっちってこと?」
「うん。来週には実家戻るし」
「そうなんだぁ」
「いつまで東京居られるかは、わかんないけどね」
私の最後の元彼は、およそ流浪人だ。
心の中に長年居座り続ける元彼、古屋智徳。
学年も年齢もひとつ下だがしっかり物で、リーダーシップもあって、真面目で勉強家。息の抜き方も知っている。
彼が大学3年の時に海外留学し、そのため1年留年。更に関西の大学院へ進学したので、この春からやっと社会人だ。
顔は悪くないけど、背がちょっと足りない。かなり細身で、見た目は弱そう。正しく草食系。
留学から帰ってきてからも、関西どころか日本に居ることが少なく、いつも勉強に研究に遊びに旅行に、精力的に活動している。
私とは比べ物にならないくらい世界外広く、日常が刺激的で、たぶんずっと遠くを見ている人。
放浪者のような、そんな人。
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