-CASE4-

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そして留学から帰ってきた智徳と、最早どう付き合っていけばいいのか分からなくなっていた。 実質1年もの間、ほとんど連絡も取らずに居られたという事は、それはつまり、私たちが付き合っている必要が無いのでは無いかと思えたのだ。 恋人である意味、喜び、そういったものが無く、とてつもなく独りよがりで、離れ離れ。 それなのに付き合っているという名目がある以上、そして彼が同じ日本に、いつでも会える距離に居る以上、 その連絡の少なさや会えないという状況が私の精神目に無駄な負担を掛けることは、もう目に見えていた。 友達で居たほうが、ずっと気持ちいい。ずっと好きで居られる。 それが、言葉少ない彼と私の総意である様だった。 別れてからもやっぱり好きで、どうしても想ってしまって、その正直な気持ちを本人に伝えたこともある。 それでも。 「カヤとはずっと、人として付き合っていたいから。彼氏彼女には、いつか終わりが来るかもしれないから」 それが彼の変わらぬ答えで。 きっと私は、一生、彼の一番大切な女性にはなれないだろうと悟っている。 少なくとも今の彼には、恋人や結婚といったものに裂く時間も、労力も、気持ちもほとんど無いに等しい。 真実、奴は根っからの草食系で、夢追い人で、旅人。 就いた仕事も、さすが有名国立大学の院を卒業しただけあって相当に凄いところではあるが、 きっとゆくゆくは世界中を飛び回ることになるのだろうと想像に難くない企業で。 この人が一所に落ち着いて所帯を持つなんて、果たしてこの先あるのだろうかと疑問ですらある。
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