新たなる出発

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ガチャリと自動車の扉を開け、車のギヤをRにする。 後ろを振り返り、誰もいないことを確認してから、後進し始めると、駐車場に、一台の車が入って来た。 あ、あの車は…? 見覚えのある形。そして、あの色。間違えることの無いナンバー。 雲の隙間から差し込んだ光が、運転手の顔を照らす。 ヨシ、だ。 する筈もない彼の香りが、鼻にツンと付く。 ゆっくり。 わたしの車を確認したのか、ゆっくり、空いている隣のスペースに近づいて来た。 そして。 出発しようとしていた、わたしに向かって、右手を振ってきた。 そう、いつものあの笑顔で。 愛おしかった日々が、頭の中を駆け巡る。 彼の息を、近くに感じる。 彼の車が、隣に停まる。
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