2599人が本棚に入れています
本棚に追加
わたしも、車のギヤをPに戻す。
いつもなら、わたしが先に降りて、彼の車へと乗り込んでいたけど。
今日は、彼から、わたしの車の方にやって来た。
「待てなくて…。」
開口一番。
運転席の窓を開けると、彼は、そう言った。
心に不安があるのだろうか?彼の瞳は、どことなく、虚ろな感じがした。
愛し合っていた日々に見せた、あの熱い眼差しではなく、まるで、助けを求めている様な眼差し。
「どこか、行こうか?」
こくんと、彼の言葉に頷くと、「じゃあ、いつもの場所に行こうか。」
そう言って、自分の車に戻り、車を発進させる。
―――あの表情、は…。
まるで、別れを告げた時の旦那みたいな眼差し。家族を失う時の、あの切ないもの。
はぁっと、溜息一つ吐いて、彼の後を追う。
最初のコメントを投稿しよう!