新たなる出発

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わたしも、車のギヤをPに戻す。 いつもなら、わたしが先に降りて、彼の車へと乗り込んでいたけど。 今日は、彼から、わたしの車の方にやって来た。 「待てなくて…。」 開口一番。 運転席の窓を開けると、彼は、そう言った。 心に不安があるのだろうか?彼の瞳は、どことなく、虚ろな感じがした。 愛し合っていた日々に見せた、あの熱い眼差しではなく、まるで、助けを求めている様な眼差し。 「どこか、行こうか?」 こくんと、彼の言葉に頷くと、「じゃあ、いつもの場所に行こうか。」 そう言って、自分の車に戻り、車を発進させる。 ―――あの表情、は…。 まるで、別れを告げた時の旦那みたいな眼差し。家族を失う時の、あの切ないもの。 はぁっと、溜息一つ吐いて、彼の後を追う。
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