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彼の問いに、答える事無く。
また、車内に、重苦しい沈黙が戻ってきた。
何度目かのカーブを曲がると、目の前が開けた。
標高が高いせいなのか、低い木が立ち並んでいる。
宝石が散りばめられている様な、夢の夜とは違い、眼下には、稲穂が刈り取られ、荒んだ大地が広がっていた。
「外に、出る?」
駐車場に車を停め、ヨシが聞いてきた。
下を向きながら、彼の顔を見ることも無く、こくんと、頷く。
―――何か一言でも話せば…きっと、わたし…。
エンジンを切り、先にヨシが、バタンとドアを開け、外に出る。
わたしは、電池の切れた人形の様に、助手席から動くことが出来ない。
一歩も、踏み出すことが出来ない。
息を吸う事さえ、苦しい。
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