2600人が本棚に入れています
本棚に追加
しばらく歩くと、芝生の中に、ぽつんと、東小屋が立っていた。
「あそこで、話そうか?」
後ろを振り向き、彼が言う。
「うん。」
目を合わせる事無く、わたしが答える。
―――ヨシは、どうしたいのだろうか?
彼の後を追いながら、そんな事を考える。
―――わたしと、戻りたいのだろうか?
びゅんっと、二人の間に木枯らしが吹く。
―――それとも、自分の状況を伝えたいだけなのだろうか?
枯葉達は舞い、風に乗って、別な場所へと連れ去られる。
命の輝きを失ったものは、もう、抗(あらが)う力など無い。
自然という、大きな流れに、身を任せるしかないのだ。
朽ち始めた東小屋に着く。
ヨシが座り、対面する形で、わたしが座る。
恋人同士だった頃は、きっと、隣に座っていただろう、けれど。
これが、わたし達の、今の距離。
最初のコメントを投稿しよう!