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―――ヨシは、わたしと付き合いたかったんだ。
その言葉を聞いて、わたしは、ようやく、顔を上げ、目の前に座る彼を見る。
真っ直ぐな視線で、きっと、下を向いている時も、この視線で、わたしを見つめていたのだろう。
顔も、瞼も、動かすことなく、見続けている彼。
「やっと、顔を上げた。」
そう言って、安心したかの様な笑みを浮かべる。
そして、黙っているわたしに、優しく、話しかける。
「俺から、離婚を告げたんだ。」
「え?」
意外な展開。
「俺、やっぱり、好きでもない人と、一緒に暮らしていくことなんて出来ないから、さ。
…俺、サヨじゃなきゃダメなんだ。
何を見ても、何をしても、サヨの事しか、思い浮かばないんだ。
だから…俺から、別れようって言ったんだ。」
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