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「やだ……やだ。怒らないで。私怒られなきゃいけないようなことしたかもしれないけど、でもでも怒んないで!」
「何それ。したの? してないの?」
――シた?
「……シてない!!」
「お前それ、ヤってないって意味だろ」
くしゃり、と私の髪をめちゃくちゃにまぜながら、不機嫌そうに追及を続ける圭輔からは、それでもほんの少しだけ、安堵の気配と怒気が和らいだ様子が感じられた。
「で、俺が怒るような」
話しながら背中と腰にまわされた腕に
「何をどこまで――」
かき抱かれて動けない私の
「……されたの? それとも、したの?」
首筋に落ちてきた、唇――。
「ん……ッ、ちょっ」
甘く疼く刺激に眩んで、こんなんじゃ話ができない。
身をよじって逃れようとすると、
「やなの?」
耳元に這い上がって囁いて、
「やっ! あ、ちが、うんッ」
甘噛みしたりするから。
話が、できな……
「俺じゃもう、駄目なの?」
「――!?」
苦しいくらいに抱きしめられて、耳の横にある圭輔の顔は、全く見えなくて。
でも声で分かる。
圭輔が、傷ついてる。
私が――傷つけた。
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