175人が本棚に入れています
本棚に追加
山にはようやく雪が積もって、シーズンインしたばかり、だと言うのに。
いつものメンバー男女8人、1泊2日の滑り初め旅行先で起こった事件。
初日たっぷり滑って夜はみんなで宴会して、2人部屋4つに別れて寝て起きた、今朝。
中々起きてこない彼氏を起こしに向かった部屋には、同部屋のはずの男の子はいなくて。
彼氏は半裸で眠りこけてて、シャワールームから聞こえた、物音。
いやな予感がした。
部屋中に散乱する、気配と形跡。
聞こえる音、残り香。
すごく……いやな、予感がした。
そっと覗いた脱衣所にあったのは、女物の服で。
無言でその扉を、閉めた。
「あれ……由紀?」
呼ばれた声に振り返れば、ベッドに半身起こした彼氏は未だ寝ぼけているようだった。
なに、この仕打ち。
カッとなって、寝起きの彼氏の鳩尾に一発ぶち込んだ。
咳き込む彼を尻目にそのまま部屋を飛び出そうとして、まだ治まらない気が、武器になりそうなものを探させた。
運悪くポケットから出てきたソレを彼氏に向かって投げつけた、はずなのに。
残念ながら高ぶりすぎた気持ちのせいか狙い通りに飛ばなかったソレは、ベッドのヘッドボードに当たってふたつに割れた。
最悪!
とうに寿命も近かった、長年使いこんだガラケーの残骸には目もくれず。
もうひと滑りするはずだった2日目をふいにして、誰にも何も言わずに、1人で荷物をまとめて帰宅した。
最初のコメントを投稿しよう!