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ケータイなくなって連絡つかないからって、3年付き合って家も分かってるクセに、謝りにも来ない。 きっとアイツ――圭輔は、今日も予定通り丸っと滑って深夜に帰宅したか、もしくはまだ出先か。 シャワーの女が誰だったのか確認できなかったけど、きっと私と別室だった2人の内どっちか。 知りたくもない。 もしかしたら、今もまだ、一緒にいる。 ――死ねッ! 今日来ないなら、きっともう、来ない。 3年付き合った圭輔の生活も性格も、理解しているつもりだ。 シーズン中は有休使いまくって雪山に行く代わりに、仕事の日には200パーセント全力なのが圭輔。 終電まで残業してるか雪山行ってるかのこの時期、片道1時間かけてうちまで来る時間はない。 面倒なことや気が乗らないことはずるずると後回し、その内どうでも良くなって、そして忘れるのが圭輔。 本気で会う気があるなら今日来るはずだし、後回しにされたのなら、もう。 ――いかにケータイが便利なツールだったか。 新しいスマホを手に入れてはみたものの、繋がる連絡先が登録されていなければ何の役にも立たないのだと気付かされた。 謝るのも言い訳するのも仲直りするのも、ケータイひとつあればどんだけ簡単で。 そして、どんだけ薄っぺらいことか。 電子媒体のコミュニケーションツールが便利になればなるほど、人間関係が希薄になる。 そんな年寄りの戯言を、初めて、実感した。 それなのに。 なんで今さら古参のSNSに登録してんだか。
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