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今まで使っていたSNSには――少なくとも私の使い方には、赤の他人と『出会う』側面がなかった。 両親の影響なのか、どこか不健全でいやらしい響きに聞こえる『出会い系』という言葉に、ずっと嫌悪感を抱いてきたからだ。 だけど登録したWILLというサイトは、『出会い』について規制のないSNSだ。 まあ、だから何となく避けてきたのだけれど。 群馬からひとり電車で帰ってくる道中、圭輔の浮気と二分して頭を占めていたのは、一緒に滑る雪山仲間がごそっといなくなってしまったことに対する焦りだった。 そしてふと思い出したんだ、遠い昔に誰かにWILLを勧められた時のこと。 それって『出会い系』でしょ、と断る私に苦笑いしながら、 「男女のなんとかとか犯罪とか危険なもんじゃなくて、趣味のあう仲間が探せるんだよ」 ――そんなことを言ってたのが誰だったのかは、もう思い出せないけれど。 もしその話が本当なら、WILLは私に、新しい雪山友達を作ってくれるのかもしれないと。 あわよくば、的な期待を、少しだけした。 圭輔のことは、裏切られた怒りとか悲しみとか、一緒に過ごしてきた思い出とか愛情とかよりも、もう一緒にスノボに行けないっていう残念感がおっきくて。 考えている内に、彼氏と雪山の比重が分からなくなってきた。 だから。 圭輔が謝りに来ないつもりなら、もう、それでいい。 これから始まるスノーシーズンを丸々無駄にする気はさらさらないのだから、私はWILLで、新しい仲間を探そう。 ――あわよくば、新しい彼氏も……なんてことは、別に考えちゃいない。 今のところは。
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