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「遊びなれてるんですね。」
店を出て乗り込んだエレベーターの中で距離を保ちながら立つ。
「それは、褒め言葉ととっていいのか?」
「ご自由にどうぞ。」
「そうか。ありがとう。」
…褒め言葉にとった。
その図太い厚かましさに何だかいろんなトコを通り越して笑ってしまった。
「クスクス…本当にいい性格してるよね。」
強い酒を飲みなおしていたせいか、少し楽しい気分になっていた私は、ついくだけた口調になる。
「そうか?じゃあ、あつかましいついでに。」
そう言うと達也は近づいて手を握ってきた。
暖かい大きな手が私の手を包む。
その感触に不覚にも心臓が反応した。
ただ、それを悟られるのは嫌なので、極めて平然とした態度を装う。
「何?この手は。」
「お姫様を無事送り届けるのに必要だろ。」
「はあ?」
私の尚更あきれた反応に、達也は離さないというように力を込めてくる。
強引な男だな…。
まあ、嫌いじゃないけど…。
先ほどのマスターとのやりとりで、若干達也に対する印象が好意的になっていた私は『まあいいか』と思ってしまう。
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