誰が誰?

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------------------------------------------------------------- 「へぇ…徹底してるわね…。」 私は思わず感心の声を上げてしまった。 巧と待ち合わせをしたのは、例の偶然出合ったあのバーだった。 今日はカウンターではなく、二人でBOX席に座り、巧から話を聞いていたところだった。 「ボクシングに空手にテコンドー、古武道…すごい種類習ってるのね。」 「はい…体の動きを表現するには、経験してみるのが一番で…。」 ボソボソと喋ると巧は、毎度、視線を逸らして、下へ落とす。 「…作家も大変ね。」 巧は向かいの席に座り、Tシャツにジーンズにメガネというラフなスタイル。 その向こうには、仕事帰りできっちりパンツスーツを着た私。 見てる人がいたら、どんな組み合わせだろうと想像を掻き立てられるだろう。 「はい…で、でも、もちろんフィクションの部分もいっぱいあります。ただ、発想のきっかけになればと始めたんですが…体が動くようになると楽しくて…」 「そうよね。うまく型が決まった時なんか、なんともいえない達成感みたいなのがあるもんね。」 「は、はい。達成感です。」 私が同意すると、巧は目をきらきらさせて答える。 達也に比べて、段違いに受け入れられる反応だ。 まあ、恋人には考えられないけど。 弟のように親しむ分には、楽しく付き合えるのかもしれないと思い始めていた。
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