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帰る仕度を整えて戻ってきた私に巧が何故かそう聞いてきた。
「…は?」
寂しそうな声音が理解できず、聞き返してしまった。
え…この人…状況解ってるよね。
友達の家に遊びに来てるわけじゃなくて、あんたの兄貴と寝て泊まってしまった女だって事。
「よ…よかったら食後のコーヒーでも…。」
何言ってるんだ彼は…
「い、いいえ。もう、お暇します。ごちそうさまでした。それと、洗濯ありがとうございました。」
私は何故引きとめようとするのか、巧の心情がまったく理解できず、とりあえず礼を言って帰る為に玄関に向かった。
「あ、あの…達也に何か伝えることがあれば…。」
玄関までついてきた巧がおどおどしながら言う。
あの男に伝えること?
守ってくれたところに少し心動かされたけど、性格的には合わない。
一夜の過ちとして忘れ去りたいのが本音だ。
「『さようなら』とお伝え下さい。」
「え!?そ、そんな。」
「あ、重ねて、『借りは充分返しましたから、二度と目の前に現れないで欲しい』と伝えてください。」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
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