記憶

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電話を切って斉藤の元へと向かう。 「どした。急用でもできた?」 怪訝そうな顔で斉藤が聞いてきた。 「いや。彩からだった。あっちは今、何かと忙しいみたいでね。」 「そうか。…じゃあ、どこいく?」 「あれ、みんなは?」 「大勢で飲みに行くより、俺一人の方が愚痴りやすいんじゃないかって、店長が。」 「はぁ。…愚痴るほどの悩みなんてないんだけどな…。」 「まあ、店長はそうは思ってないってことだな。」 「ふうん…。」 そんなに元気なかっただろうか… 皆に要らぬ心配をかけてしまったようだ。 明日からは、元気に働かなくては。 「じゃあ、まずは腹ごしらえして…うまい酒の置いてるバーにでも行きますか。」 「おう!寿司、鮨。」 「さあー回るぞー。」 「皿上限ナシ?」 「冗談!?」 「あははは。まあ、満腹で倒れない程度にほどほどにしとくよ。」 「ぜひ、そうして下さい。」 漫才のようなやり取りをしながら、とりあえず駅へと向かって二人で歩き出した。 ヘタに女扱いしない斉藤とのやり取りは、毎度のことではあったが気を使わずにすむ気楽さで、心を軽くしてくれていた。 アイツとは違う… ふと心にそんな言葉が浮かんだ。 そう…あたりまえ…だって斉藤は仕事の同僚なだけだから… 重くない…から…
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