35人が本棚に入れています
本棚に追加
電話を切って斉藤の元へと向かう。
「どした。急用でもできた?」
怪訝そうな顔で斉藤が聞いてきた。
「いや。彩からだった。あっちは今、何かと忙しいみたいでね。」
「そうか。…じゃあ、どこいく?」
「あれ、みんなは?」
「大勢で飲みに行くより、俺一人の方が愚痴りやすいんじゃないかって、店長が。」
「はぁ。…愚痴るほどの悩みなんてないんだけどな…。」
「まあ、店長はそうは思ってないってことだな。」
「ふうん…。」
そんなに元気なかっただろうか…
皆に要らぬ心配をかけてしまったようだ。
明日からは、元気に働かなくては。
「じゃあ、まずは腹ごしらえして…うまい酒の置いてるバーにでも行きますか。」
「おう!寿司、鮨。」
「さあー回るぞー。」
「皿上限ナシ?」
「冗談!?」
「あははは。まあ、満腹で倒れない程度にほどほどにしとくよ。」
「ぜひ、そうして下さい。」
漫才のようなやり取りをしながら、とりあえず駅へと向かって二人で歩き出した。
ヘタに女扱いしない斉藤とのやり取りは、毎度のことではあったが気を使わずにすむ気楽さで、心を軽くしてくれていた。
アイツとは違う…
ふと心にそんな言葉が浮かんだ。
そう…あたりまえ…だって斉藤は仕事の同僚なだけだから…
重くない…から…
最初のコメントを投稿しよう!