記憶

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「大友さん…」 「言うな。あれでも腕は立つんだ。女装は仕事現場の都合。たまにしかやらん。」 「そ、そうですか…。」 グラスを見つめたままボソボソという。 「警護の相手が女性でな。24時間の張り付きでな。男だと何かと不便だし。かといってうちで使える女警護員は一人しかいないから、ボスがついてるんだ。」 「へぇ…。」 大友さんの説明になるほどと頷いた。 元警察のSPだった大友さんに腕が立つといわしめるボスの山田太郎は凄い腕なのだろうが… あんな中性的な容姿だったとは…。 俺も大概、変わってると思うが…。 山田には敵わない気がした…。 しかし、要人警護を専門としているこの会社が24時間張り付きの警護をするなんてどんな女性なのだろうと興味が湧く。 「大友さん、話せる範囲でいいので、どんな内容なのだか教えてもらえませんか?ちょっと興味が湧きました。」 「…そうくるだろうと思ってたよ。」 大友さんはしょうがないなぁという顔をして笑った。 「話せる範囲でな。今日は奢りだぞ。」 「もちろん、そのつもりでしたよ。」 ニヤリと笑って大友さんはバーテンを呼んだ。
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