記憶

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楽しい思考に耽っていたのを邪魔され、鋭い眼差しを向ける。 顔はまあまあ可愛いが、落ち着いた店に合わない騒がしい派手な娘で、ヘルプに着いた時、異常に俺に関心を寄せていたのを覚えている。 名前も覚えていない女は、店にいる時のドレスとは違うが、露出の高い派手な格好だった。 俺は歩みを止めなかったので、腕を組んだまま歩くような格好になる。 「ねぇ、覚えてるでしょ。私の事。」 「…ああ。」 迷惑感を隠さずぶっきらぼうに答えるが、気に止めていないようだ。 「良かった。あのあと私、店を移ちゃったから、もう会えないかと思ってたのに。嬉しい。」 「…そうか。」 じゃあ、あの店の雰囲気も良くなったな。 「ねぇ、せっかく会ったんだし、遊ばない?今日は仕事休みなの。」 女は、絡ませていた腕を引っ張って、俺を立ち止まらせ、上目遣いで甘えた声で覗き込んでくる。 きっとその辺の男なら、尻尾を振って喜ぶんだろうが…。 騒がしい女は嫌いだ。 美香に振られたからって、こんな女の誘いに乗る気はない。 「せっかくだが、忙しいんだ。」 「えー。ねぇ…お願い。」 両手で捕まえた俺の腕を小刻みに振り、甘えてみせる。 「無理だ。」 「もう…じゃあ、連絡先だけでも教えてよ。私、本当に会いたかったんだから。」 女は悲しそうに首を傾げて言う。
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