記憶

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巧がベッドサイドの置時計で時間を確認した。 さっきまで抱き合って眠っていたというのに、一切そのことに巧は触れなくて… 逆にこちらから聞くチャンスも失ってしまった。 8時… 4・5時間は寝てしまった計算になる。 「今日は家でゆっくり休んだ方がいい。家まで車で送ります。」 「え?いや、いいよ。平気だから、電車で帰るよ。」 ぐっすり眠ったせいか、あんなにだるかった体は嘘のように元気で。 だから断ったのだが…。 「駄目です。また、具合が悪くなったらどうするんです。」 「大丈夫だって、ここ最近仕事が忙しかったから、ちょっと疲れが溜まってただけだって。」 「なら余計です。送ります。」 きっぱりと巧は言い切る。 「ちょ、ちょっと、いいって。…(ぐぅ)…あ…。」 断りを言おうとした私の言葉にお腹の音が重なった…。 「あ…僕もお腹が空きました。今から作るのもダルイので、一緒に食事に行きませんか?そのついでに送ります。」 私の腹の虫の叫びが聞こえたはずなのに何事もなかったように巧が言ってきた。 その心遣いに、意地を張るのをやめた。 「そうね。…じゃあ、お願いする。もちろんフェラーリで行くのよね。」 「え。は、はい。…あ…運転しますか?」 「するわ。もちろん。」 私の即答に巧が可笑しそうに笑った。
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