記憶

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「店長も心配してたぞ。」 「えッ。そう…そんなに元気無い?私?」 みんなが心配するほど、変だった?私? 「ああ。恋人と別れても元気に仕事してたお前が新入荷の車にも食いつかなかったじゃないか。」 「…ああ。」 そうだった。 今日は新しい車が店に入荷してきたのに、説明聞いてないや。 何ぼんやりしてるんだ?私。 いつもだったら、すぐ試乗の手配したり、メーカーのHPから情報検索して、セールストークの下準備で楽しくしてるはずなのに。 「…加村さん誘って試乗でもしたらどうだ?」 「…ああ…今は無理かな?あっちもイロイロ忙しそうだし。」 「あ、もしかして加村さん恋人でもできたか?」 「そう。」 「あちゃー。先越されたか…。」 斉藤は見るも明らかに肩を落とした。 「何?彩を狙ってたの?」 「誰かさんと違って、性格よさそうないい子だなって思ってたのに…。」 「おあいにくさま。彩は斉藤になんかやりません。」 斉藤は爽やか系で二枚目とまではいかないが、愛想がいいので、女性客にも受けがいい。 モテるんじゃないかと思うのだが、彼女がいるという話を聞いたこともなかった。 「あ、わかった。加村さんにかまってもらえなくなって、寂しがってるんだろ。」 「…は!?」 思いもしない方向に展開した話題にびっくりした。
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