記憶

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「中村、加村さんにべったりだもんな。」 「はあ?そんなことないでしょ。」 私の反論も聞かず、斉藤は一人納得したように、うんうんと頷いている。 「しかし…そうなると中村が絡んできても止める人がいなくなるな。困った。」 「別に、彩じゃなきゃ、やめない訳じゃないわよ。」 「そうか?」 「そうよ。」 私の返答を聞いて、斉藤がニヤリと笑った。 「じゃあ、約束のメシ奢ってもらおうかな。今日、終わったら行くぞ!」 そうだった。 巧に車を届けに行ったときに約束してたのに、今まですっかり忘れてた。 「おっけ。」 「タダメシ万歳。じゃあ、もう一踏ん張り、はりきって仕事しますか。」 「そうだな。頑張りますか!」 他愛もない話をしたせいか、幾分か軽くなった心持ちに渇を入れて、私は立ち上がった。 「ありがとね。斉藤。」 「おう。今日はステーキな。」 「ぶ!贅沢言うな。」 「よぉし、スシに負けてやる。」 「回っててもいい?」 「皿数上限なしなら。」 「おぉい!」 二人笑いあったところで、店に客が入ってきて、斉藤は接客に、私は二人で飲んだコーヒーを下げにと、それぞれ仕事に戻った。
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