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「………で、最後の一人が放った銃弾から、篠原氏を守って…怪我したということらしいです。」
顔を正面に向けて運転しながら、巧はたんたんと説明した。
連れ去られていたのは、彩だけではなく、篠原さんもだったというのだ。
警察が踏み込み、その隙をみて山田警備が二人を救出したまでは良かった。
だが、隠れていた犯人のうちの一人が、篠原さんに向かって発砲したらしい。
それを庇って、彩は撃たれたのだ。
いかにも彩らしかった。
その時に、彩よりは軽傷らしいが、山田警備の人も撃たれて怪我をしたため、その場が混乱し、巧への連絡も遅くなったということだった。
「加村さんは、手術を終えてICUに入っているそうです。加村さんの両親は、篠原家のプライベートヘリに乗って駆けつけたらしい。」
巧の説明を聞きながら、彩の状況に思いをはせる。
怖かっただろうに…
急にこんなことに巻き込まれるなんて…
銃で撃たれるなんて…
あんな側にいたのに…悔やみきれない思いが再びわきあがる。
「……おばさん、泣いてた。」
突然、娘が撃たれて生死を彷徨うなんて、思いもしなかっただろう。
いつも元気で陽気な彩のお母さんのあんな声、聞いたこと無い。
「…美香さん、自分を責めないで…。」
「…わかってる。」
自分を責めて、悔いたって今が変わるわけではない。
そんなこと…わかってる。
わかってるけど…。
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