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そっと病室を覗くと眠る彩の側には、篠原さんがついていた。
横のイスに座り、眠る彩の手を握っていた。
彩は顔色は悪かったが、安心して寝ているようだ。
篠原さんも怪我をしているようで、顔は絆創膏だらけだった。
「篠原さん…。」
「美香ちゃんも篠原さんのこと知ってるのね。」
「…はい。」
「篠原さんもね大怪我をしてるんだけど…。看護婦さんが何て言っても聞かなくて…彩の側を離れようとしないの。」
「そうなんですか…。」
話し声に気づいたのか、篠原さんが振り返った。
「…中村さん。」
私は、彩のベットに歩み寄った。
手を伸ばして彩の頬に触れる。
温かかった…。
心の底から安堵して、再び涙がこみ上げてくる。
「…一緒に買い物してたんです。でも、急にいなくなって…。」
「…すまなかった。」
暗い顔をして篠原さんが謝る。
謝る相手が違う…と言おうとしたが…
表情を見て、やめた。
自分を一番責めているのは彼だろうから。
「…篠原さん…彩は貴方を守ったことを後悔してないと思います。」
だって…そういう子だから…
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