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「だから……篠原さんは、こんなことが二度と起こらないようにして下さい。」
篠原さんは私の言葉に目を見張った。
「彩を二度とこんな目にあわせないように。…篠原さんにしかできませんよね。」
「……わかった。」
「なら、篠原さんもちゃんと自分の怪我を治すために休んでください。」
「……ああ。」
ゆっくりと私の言葉に篠原さんは頷いた。
しばらくそのまま手を握っていたが、看護婦さんがちょうど篠原さんを呼びに来たので、素直に従って行った。
入れ替わりで、おばさんが彩のベッド脇のイスに腰掛けた。
「篠原さん、休んでくれて良かった。美香ちゃん、ありがとうね。…もう、みんなに心配かけて…。この子はもう…。」
おばさんが、彩の頭をさする。
言葉とは裏腹に、『いい子いい子』とあやすように…
二人の姿を見て…
私も、小さい頃、母にああやって頭を撫でられながら眠りについたものだ。
幸せだった記憶を思い出していた。
彩…
生きててくれて
ありがとう…。
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