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「ありがとね。…この恩は忘れないから。」
「恩なんて…僕は僕のやりたいようにやっただけだから、気にしないで。」
「……いいヤツだな。巧。」
『そう?』と言って巧は笑った。
その巧に私は何も言わず微笑み返した。
その後は、二人とも言葉を交わさず、走る車内を沈黙が満たした。
言葉は無いが、流れていく朝日を浴びて清清しい街の風景を眺めながら、心地よい時間だった。
そして、疲れがピークにきていた私は、睡魔に負け眠りに落ちようとした。
「ちょっと、待って美香さん!寝ないで!家!僕、美香さんの家の場所はっきり覚えてないから!!」
…そうだった。
前は、私が運転して帰ったんだった。
その時は、家を覚えられるのも嫌かも…と思っていたから…
わざと入り組んだ道を通って…
…もう!私の携帯の電話番号盗み見る知恵があるなら、家の場所も付きとめておけよ!
まったく理不尽な考えだが…
本気で頭に浮かんだのは…
…誰にも内緒にしておこう。
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