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自宅への道順を巧に説明しながら、車に乗っていると私の携帯が鳴りだした。
慌ててバッグから取り出し、画面を見てみると携帯の画面に出てきた文字は『 篠原誠(彩の彼?) 』だった。
…登録する際におフザケでそう書いたのだ。
ほんの数週間前なのに、なんだか遠い昔のようだ。
でも、どうしたのだろう?
篠原さんも怪我をして休んでいるはずなのに…。
何かあったのか?
不安になりながら、慌てて通話ボタンを押す。
「もしもし」
『中村さん、すいません。今どこですか?』
「え…今は、車で自宅に向かってますけど。」
『そうですか…大変申し訳ないのですが、病院に戻ってきていただけますか?』
「彩に何かあったんですか?」
『いいえ。彼女は大丈夫です。ただ、少しお願いしたいことがございまして、ご友人の速水さんも一緒にお願いいたします。』
「え?巧もですか?」
『はい。』
「ちょっと待ってください。」
私は、通話を保留にすると巧へ問いかけた。
「巧。篠原さんが巧と私にお願いしたいことがあるから、今から病院に戻ってきてって…」
「え?僕と美香さんに?」
「うん…」
「…なんだろ…。僕は大丈夫だけど、美香さんは仕事なんじゃ。」
「うーん…まあ、今日は商談の予定も入ってないし、休むよ。」
「じゃあ、戻るね。」
「うん、よろしく。」
巧は、来た道を戻る為に車線変更をしはじめた。
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