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「今回、うちの木下が加村さんの警護にあたっていたのですが、加村さんが誘拐され、加村さん救出を優先したため、中村さんへ事情の説明が出来ずに多大な心労を与えてしまい申し訳ありませんでした。」
山田警備の面々が続いて頭を下げる。
「い、いいえ。もちろんそうしてくれて良かったんです。」
「いえ。本来でしたら、中村さんにも気を配るべきでした。申し訳ありませんでした。」
「本当にいいんです。たく…速水さんから伺って事情を知ることができたので…」
たくさんの人がいる中で、呼び捨てにするのは、憚られて言い直した。
「速水さん、迅速な判断ありがとうございました。」
「いえ。」
「それで、お二人にお願いしたいことと言うのは、今回の事件を公表しないようお願いしたいのです。」
「え…どういうことですか?」
彩があんな怪我をしたというのに、公表しないとはどういうことなの?
「私から説明しよう。中村さん、今回の事件が起こったのは、私のイギリスにいる祖父の相続争いが原因なんだ。」
「誠!?」
山田さんが、篠原さんの話を慌てて遮ろうとする。
「中村さんには、知らせておいたほうが、彩にもいいだろう。もちろんこの件は一切他言無用でお願いいたします。速水さんもよろしくお願いします。」
「…わかりました。」
「彩は…わかってるんですか?」
「…ああ。犯人達が隠さず言っていたから。」
「そうですか…。」
生死を彷徨うような大怪我をさせられて…彩は何を思ったのだろう。
…彩は篠原さんをかばって怪我をしたという…それが、答えなのだろう。
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