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とにかく、やかましいのだ。
「お、おい来るぞ来るぞ」
仲間の一人が不安に駆られ道路を覗きこむと、その不安が一気に伝染して皆道路を覗きこんだ。
駐車場を西いくらかに過ぎたカーブの向こうからヘッドライトが明り、音の主は遂に姿を現した。
「うわ、なんかめちゃくちゃうるせぇ!!」
「なんだよあれは!?」
それが姿を現した瞬間、あまりのうるささに皆一斉に耳を塞ぐ。
ヘッドライトの光りが一瞬駐車場沿いの道路を照らした、と思った次の瞬間。
鼓膜を突き破りそうな甲高い雄叫びを上げながら、光と共に疾風はやてのように皆の目の前を怪物が駆け抜けてゆく。
あたりの空気が揺れたようだった。
耳にはすこし耳鳴りがする。
一瞬のことだった。
轟音が、エグゾーストノートが靡木の山々に響き渡っている。
不安を振り払うように、駐車場にいる走り屋達は一気に騒ぎ始めた。
「せ、セブン。FDだ!!」
「ああ、それもかなりめちゃっぱやだぜ!」
「あんなやつここにいたか!?」
「いや初めて見るヤツだ!」
「どんなやつが乗ってたかわかるか?」
「わからない、そこまで見えなかった……」
「あのうるささ、絶対エンジンノーマルじゃねぇ。かなりなハイチューンドだぜ、絶対そうだ!」
「アイツは何もんなんだ!」
智之をはじめ走り屋仲間たちは喋るのをやめようとしない。
ますますヒートアップしていき。もはや龍と貴志の勝敗の行方など、意識の外に放り出されていた。
皆ただ、あのいきなり現れたFD3Sにあわてるばかりだった。
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