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雄叫びを上げ、疾風のように。
龍も貴志も巧く、速い。
ドライビングテクニックでは2人は群を抜き、そして今もその通りの走り方をしている。
しかし、相手のドライバーもマシンも、遥かにその上を行っていた。
しかもハンパではなかった。
マシンのパワーとスピード、それを駆るドライバーのテクニック。明かに先を行く龍と貴志に勝っていた。
それほどまでにFD3Sは速く走っていた。
そして耳をつんざく爆音で、ド迫力満点だ。
しかし走る場所が狭すぎた。この峠道では、どうしてもパワーを持て余してしまう。
比較的広めの二車線とはいえ、所詮は公道だった。はっきり言って道が狭く感じる、山肌やガードレールが迫ってきているようだ。
車はパワーがあればいい、と言うわけではなく。
少し間違った操作をしてしまえば車はロディオよろしく大暴れを始める、一度暴れ始めた車はそう簡単には鎮まってくれない。
それでも踏むところは踏んでいかないと、速くマシンを走らせられない。
ハイパワーマシンを走らせようと思えば、崖に張られたタイトロープの上でダンスを踊るような、繊細さと大胆さの両方が要求される。
こんな狭い峠道ではなおさらのことだ、少しのミスで崖下転落よろしくマシンがガードレールか山肌にディープキス(激突)だ。
FD3Sのドライバーはこの峠道でそんな車を速く走らせているのだから、かなりなテクニックの持ち主だ。
まるで体の一部のようにFD3Sをドライブしている。
ドライバーにとってみれば、それも当然と言えば当然なのだろう。
徐々に徐々にMR2とRX-7との距離が縮まって行く。
気が付けば、RX-7のルームミラーにFD3Sのヘッドライトの光がちらちらと写りだしていた。
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