scene1 遭遇

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「まさか……」  ルームミラーに写る光を見て貴志は驚いた。もう自分のすぐ後ろにつこうかというところまで来ている。  貴志はすぐパッシングして前の龍に知らせ、それに気付いた龍もサイドミラーで後ろを確認する。ルームミラーでは貴志のRX-7が邪魔で後ろが見えない。  サイドミラーには貴志のRX-7のフロントマスク、その少し後ろからFD3Sのヘッドライトの光がちらほらと見え隠れしている。 「まさか、追いついてきているのか。こっちだって必死に走ってるんだぜ。なのに追いつかれるなんて……!」  龍は苦々しく舌打ちをする。とにかく今は前に集中して、貴志とともにそいつをブッちぎるしかない。  貴志も龍と同様FD3Sを引き離そうとするが、間に挟まれ窮屈な思いをして仕方なかった。 「どうすりゃいいんだよ……」  と、前と後ろを交互に見ながら焦る。  FD3Sは2台をプッシュする。  左コーナー、すこし緩めの高速コーナーが迫ってきた。  龍と貴志はコーナーを見据え、ラインを読み、ギアはそのまま。一気にコーナーに進入する。ブレーキは踏まず、ステアとアクセルをうまく操作しながら車をラインに乗せコーナーに侵入する。  タイヤが少しスライドする、だが2人はアクセルを緩めない。そのままスライドするに任せ、ドリフト気味に左高速コーナーを掛け抜けてゆく。  クルマは曲がってくれる、そう走らせている。  脱出ラインに乗り、アクセルを全開にすれば2台は一気に加速を始める。  タコメーターの針が、ブースト計の針が、スピードメーターの針が一気に上がる。これでもか、と言わんがばかりの速度で2台はコーナーを抜けた。  だがしかし。  FD3Sはその上を行っていた。  ありあまるパワーに物を言わせ、一気に2台に追いつき。貴志のRX-7のナンバープレートがはっきり見える。  コーナーに入る前は車一台分の差があったのに、コーナーを抜けたとたんに……。
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